2010年08月20日

空想旅日記

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特急電車にはまだ人が少なかったけれど、
米原駅はひどく混んでいて、押し出されるように階段をのぼった。

乗換の改札に着くと、駅員さんが「とりあえず通って!」と
切符を見ることもなく、乗客たちをどんどん通してゆく。
あのパチンってやるやつが好きなのに、ちょっとさびしい。
行け行けと言われているような気がする。
まあ行くけどさ。

周りにつられて、小走りに新幹線のホームへ急ぐ。
列車到着のベルがけたたましく鳴り、
大きな、それは大きな新幹線がホームへやってきた。
初めてじゃないはずなのに、
なんだか凄くどきどきした。
真っ白で、なんとなくキラキラしていて、勇ましい。
車窓の向こうに見える乗客たちが、別世界の人々みたい。
すぐに閉まってしまいそうなその入口へ
吸い込まれるように飛び乗った。
その後ろから、同じく駆け込んできた人。
読んでいたらしき新聞をくしゃくしゃにして、
鞄もろとも抱えている。
深く被った帽子から汗が滴っている。

私は下から覗いた。
その人は慌てて新聞で顔を隠す。
あっ、と声をあげた。
私達を邪魔そうにすり抜けてゆく乗客たち。

「おとうさん」

カサカサと、新聞を下げる。
「…ごめん」

笑った。これでもかというくらい笑った。
お父さんはしゅんと下を向いている。
「用事があって。」
あははは。
「あ、一緒に行こうと思って。」
あははは。
「ごめん、心配でついて来た。」
飛んだ勢いで、サンダルが脱げた。
しがみついたお父さんの首元は、汗だくで、くさい。

「おばあちゃん、びっくりするね。」

私の一人旅日記はこれで終わり。
皆さんもよい夏をお過ごしください。


津留崎夏子
posted by sumika at 14:43| Comment(0) | のるもの出演者のコーナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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