2010年08月20日

おまけ:ボツごあいさつ

黒澤世莉です。もうすぐ最後の稽古です。ボツになった当日パンフレットのごあいさつ文を、もったいないの精神で公開します。

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原田さんは演出向いてるから、やんなよ、と焚き付けた手前、何かやるとなったら力を貸さないわけにはいかない。

ていうか、久々に肩の力を抜いた演劇づくりが出来て、楽しかったです。お客様のためにとプレッシャーを糧にしてヒリヒリものを作るのもいいけど、たまには自分が楽しくなるために演劇したいじゃない。

で自分が楽しいってなんだろうって考えると、お客様が喜んでくれることだったりして、まあ切り口の角度の問題です。

今回は、毎回そのときのお客様としか作れない、オーダーメードな演劇になりました。

ご来場ありがとうございます。どうそごゆっくりおくつろぎください。
posted by sumika at 17:59| Comment(0) | のるもの出演者のコーナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【世界のはなし】(4) いなくなるはなし

1999年2月、ロンドン。

誰にもことわり無く、英国に行った。別段の理由があったわけではなく、強いて言えば「全部放り出したい」気分だったくらい。留学していたFを頼って、学生寮に転がり込ませてもらった。

まだインターネットがいまほど普及していなかったので、演劇の情報はTime
Outという、ぴあのような雑誌を参考にして、滞在中観倒した。あれから10年、まさかぴあの発行部数が激減して、休刊すれすれになっているなんて、全然想像もしていなかった。

ロンドンにはコンセッションという、学割みたいな制度がほとんどのプロダクションにあって、けっこう安く色んな公演を観ることが出来た。ほとんどフリンジという、日本で言うところの小劇場の公演を観た。2階建てのバスに乗ってけっこうな郊外に行ったり、国鉄の駅からけっこう歩いたり、いろんな劇場に足を運んだ。どこもパブがあってお酒が飲めることとか、客席に色んな年代のひとがいることが印象的だった。

大きい劇場には2回足を運んだ。テアトル・ド・コンプリシテを観に行ったけど、満員で入れなかった。もう一つは、当時毛嫌いしていたミュージカルで、でもロンドンまで来たんだから観ておくか、くらいの軽い気持ちで1本選んだ。「RENT」を観て、Seasons
of Loveで泣いた。ミュージカルに偏見どころじゃない、演劇は音楽には勝てないんじゃないかと思った。この命題は私にとっていまだに未解決。

そういうわけで、パンとチーズで過ごして帰国したら、方々で大変怒られた。ごめんなさい。

ちなみに、そのときお世話になったFは、無事帰国して、いまでは映画監督として活躍している。
posted by sumika at 15:10| Comment(0) | のるもの出演者のコーナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

空想旅日記

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特急電車にはまだ人が少なかったけれど、
米原駅はひどく混んでいて、押し出されるように階段をのぼった。

乗換の改札に着くと、駅員さんが「とりあえず通って!」と
切符を見ることもなく、乗客たちをどんどん通してゆく。
あのパチンってやるやつが好きなのに、ちょっとさびしい。
行け行けと言われているような気がする。
まあ行くけどさ。

周りにつられて、小走りに新幹線のホームへ急ぐ。
列車到着のベルがけたたましく鳴り、
大きな、それは大きな新幹線がホームへやってきた。
初めてじゃないはずなのに、
なんだか凄くどきどきした。
真っ白で、なんとなくキラキラしていて、勇ましい。
車窓の向こうに見える乗客たちが、別世界の人々みたい。
すぐに閉まってしまいそうなその入口へ
吸い込まれるように飛び乗った。
その後ろから、同じく駆け込んできた人。
読んでいたらしき新聞をくしゃくしゃにして、
鞄もろとも抱えている。
深く被った帽子から汗が滴っている。

私は下から覗いた。
その人は慌てて新聞で顔を隠す。
あっ、と声をあげた。
私達を邪魔そうにすり抜けてゆく乗客たち。

「おとうさん」

カサカサと、新聞を下げる。
「…ごめん」

笑った。これでもかというくらい笑った。
お父さんはしゅんと下を向いている。
「用事があって。」
あははは。
「あ、一緒に行こうと思って。」
あははは。
「ごめん、心配でついて来た。」
飛んだ勢いで、サンダルが脱げた。
しがみついたお父さんの首元は、汗だくで、くさい。

「おばあちゃん、びっくりするね。」

私の一人旅日記はこれで終わり。
皆さんもよい夏をお過ごしください。


津留崎夏子
posted by sumika at 14:43| Comment(0) | のるもの出演者のコーナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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